一級建築士 試験

令和 3年一級建築士学科試験の講評

- 令和 3年7月11日試験 -

 平成21年度に一級建築士試験の内容の見直しが公表されて以来、特に近年の技術の進歩、社会状況の変化等に係わる出題が徐々に増加する傾向にありましたが、本年の試験では、更にその傾向が顕著となり、特に計画と施工では例年に比して更に難度の高い設問が目立ちました。



学科Ⅰ計画
 計画の問題の出題範囲は広く、例年、環境、法規等の科目の分野からも出題されるのが特徴ですが、本年も幅広い分野から出題され、特に「施設を計画・運営する官民連携」、「都市開発やまちづくり」、「自然災害から住宅・住宅地等の計画」、「建築物と周辺環境」、「公共建築物等の計画」等に関する問題で新規の選択肢を含む出題が注目されました。また、例年のように計画の問題として建築士法に係わる問題も1問出題されましたが、本年は建築士事務所の開設者が業務に関して請求することのできる報酬について、報酬の基準(平成31年国交省告示第98号)に照らして適否を問うもので、法規の問題としても相当に程度の高い問題であったということができます。

 本年の計画の問題は、上記のように比較的新規な選択肢を含む程度の高い設問の割合が多く見られましたが、他方で、問題としては過去の既出題範囲内からの選択肢を含むものも少なくなく、それらについて正確な知識を有していることによって正解に至る問題も多く、出来るだけ新規の事項についての知識を正確に得ることに努めるとともに、いかに幅広く過去の既出題範囲内の事項について正確に記憶・理解しているかということも、総じて正解に至るための重要なポイントであったといえます。


学科Ⅱ環境・設備
 本年の環境・設備の問題の難易度は、概して例年並みでしたが、出題に際して単なる表面的な記憶ではなく、その事項を本質的に理解していないと正解を得ることが難しいように種々工夫された問題の出題が目立ちました。
 また、「照明」、「音響」、「排水設備」、「発電設備」、「環境・設備」等に関する問題では新規の内容の選択肢が含まれていましたが、いずれも他の既出題範囲の事項に係わる選択肢についての正確な知識があれば正解に至ることのできる問題でした。 また、本年の出題の新傾向として「非常用電源」に関する選択肢を含む問題や「被災時に救護場所等になる可能性の高い企業の設備の在り方」を問う問題が出題され、近年の災害が多発している状況を色濃く反映したものとして特に注目されました。


学科Ⅲ法規
 法規の問題は、年によっては改正法規に関する問題が出題されることがあるものの、例年、既出題範囲内の事項についての問題が主たるもので、比較的新規な問題に係わる出題は少ないのが近年の傾向ですが、本年も「容積率」、「建築物の高さの最高限度」などの毎年出題される定番ともいえる問題が多く出題されました。但し、これらの問題も普段の相当精緻な学習による知識の積み重ねがないと正解に至らないものも多く、単に毎年出題される難度の低い問題とは言い切れないことにも留意する必要があります。

 また、建築基準法以外の関係法令の出題としては、近年の社会状況の影響を反映した「建築物省エネ法」、「建設リサイクル法」に係わる法律に係わる問題が新傾向の出題として注目されます。また、建築士及び建築士事務所の在るべき立場を問う問題として、特に近年、重要視されてきている建築士法に関する問題が融合問題と含めて4問出題され、更に学科Ⅰ計画においても例年通り1問出題され、また、学科Ⅴ施工においても関連する問題が1問出題されたのと合わせると計6問出題されたことにも、今後とも留意しておく必要があります。



学科Ⅳ構造
 構造においては、近年の出題傾向として、新傾向といえる問題は比較的少なく、難易度も比較的高くない傾向が続いていましたが、本年の出題傾向もその延長線上にあるといえます。但し、構造の問題は、その事象に係わる本質的な理解が不可欠で、単なる記憶では解くことができないものが多く、以上から構造を不得意科目と思う受験者が多いことにも留意しておく必要があります。

 以上のような傾向から、本年の傾向として構造の問題としては難度はそれ程に高くなくとも、いかにその内容についての本質的な理解が得られているかを問う問題として特に工夫されているものが目立ちました。 また、改修・補修に係わる問題の出題も近年の顕著な傾向の一つとして注目されますが、本年も改修・耐震診断に関わる問題が従来のように融合問題としてではなく、1問出題されていたことと更に、非構造部材の耐震性に係わる問題が新規の問題として1問出題されたことも注目されます。


学科Ⅴ施工
 一級建築士学科試験においては、理論の理解が重要な要素となる科目と、正確にいかに幅広く記憶しているかが重要な要素となる科目とに、概して大別することができますが、計画と施工は上記のうちで、正確にいかに幅広く記憶していることが重要な要素となる科目ということができます。

 以上から施工では近年、毎年のように新規な事項についての知識を問う選択肢を含む問題が比較的多く出題され、結果的に難易度が高い科目となってきましたが、本年も概ね以上のような出題傾向が見られるものとなりました。


本年は、新規な選択肢を含む問題の中で特に注目されるものとして、近年改正された建設業法に係わる「監理技術者補佐」に関する問題が出題されました。なお、本年も出題された「施工計画における監理者の役割」に係わる問題は毎年のように出題されている問題であるものの、近年特に重視されてきている建築士法における工事監理者の職責に関連する問題として今後も留意しておく必要のあるものと考えられます。


ページのトップへ戻る